QUESTION

来年の支払い後、現在契約中の逓増定期保険が解約返戻率のピークを迎えます。解約返戻金の使い道として、新規に立ち上げる法人への出資を考えています。役員退職金として一度、個人に支給した後、個人から新会社へ出資すべきか、あるいは解約返戻金をそのまま出資すべきか、どちらが効果的でしょうか?

ANSWER

単純な比較がなかなか難しいですが、原則として、退職金を経由させるほうが税引き後に使える資金は多めに残すことができます。両者の手取り額の差と、役員を退職させなければいけない条件を天秤にかけ、より最適な選択をして頂ければと存じます。

役員退職金で個人に支給後、個人から新会社へ出資。

「役員退職金として一度、個人に支給した後、個人から新会社へ出資すべきか、あるいは解約返戻金をそのまま出資すべきか、どちらが効果的でしょうか?」とのことですが、退職金を経由させた場合のほうが税引き後に使える資金は多めに残すことができます。両者の手取り額の差と、役員を退職させなければいけない条件を天秤にかけ、より最適な選択をして頂ければと存じます。

「役員退職金として一度、個人に支給した後、個人から新会社へ出資…」の場合、別のよくあるご質問でも紹介しましたが、原則として退職金はその全額を経費計上にすることが可能です。

 もちろん、

  • 役員を退職させる必要がある。
  • 役員最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率で計算された額のみ支給できる。

 といった条件はありますが、ピークになった解約返戻金を退職金として支給できれば、法人は保険解約による税金の支払いはありません。また、退職金を受け取る個人も、最高で2割程度の税率で大きな退職金(解約返戻金)を受け取ることができます。

 例えば、ピークを迎える保険を



【例:現在契約している逓増定期保険】

  • 保険料は半分(1/2)損金。
  • 解約返戻金1億円(90.9%)。
  • 今までに支払った保険料累計は1億1,000万円。


 と仮定した場合、保険の解約時は「1億円(解約返戻金)-5,500万円(資産計上額)=4,500万円(利益)」の計算で4,500万円が法人の利益(雑収入)。このうち、役員退職金を4,500万円支給(全額損金と)することで、法人の収支(利益)はプラスマイナスゼロに。退職金を受け取った個人は4,500万円のうち、約8割の3,600万円を手取りとすることができます。



【税引き後に残った金額】

  • 法人は1億円(解約返戻金)-4,500万円(退職金)=5,500万円
  • 個人は4,500万円(退職金)-900万円(個人税負担)=3,600万円


 法人と個人を合計すると、1億円の解約返戻金のうち、9,100万円を税引き後に使えるお金(新会社の出資に回せる資金)とすることができます。

法人で解約して、そのまま解約返戻金を原資に出資。

 一方で、「あるいは解約返戻金をそのまま出資…」の場合、退職金支給と違い、法人から新会社への出資は全く損金になりません。法人の決算上で大きな損(赤字)が出ていなければ、解約返戻金に対して、そのまま法人税がかかります。



【例:現在契約している逓増定期保険】

  • 保険料は半分(1/2)損金。
  • 解約返戻金1億円(90.9%)。
  • 今までに支払った保険料累計は1億1,000万円。


 と仮定した場合、保険の解約時は「1億円(解約返戻金)-5,500万円(資産計上額)=4,500万円(利益)」の計算で4,500万円が法人の利益(雑収入)。大きな損が無ければ、4,500万円に丸々法人税がかかり、利益800万円以下の部分に約160万円(約20パーセント)、800万円以上の部分に1,332万円(約36パーセント)、合計で約1,490万円ほどの納税が発生します。



【税引き後に残った金額】

  • 法人は1億円(解約返戻金)-1,492万円(法人税)=8,508万円


 この場合、1億円の解約返戻金のうち、8,508万円を税引き後に使えるお金(新会社の出資に回せる資金)とすることができます。

お客様の状況により、どちらのプランが最適かは異なります。

「役員退職金として一度、個人に支給した後、個人から新会社へ出資…」の場合、と「あるいは解約返戻金をそのまま出資…」を比較すると、

  • 退職金経由の場合。約9,100万円が税引き後に出資に回せる資金(法人に5,500万円。個人に3,600万円)。
  • そのまま解約の場合。約8,508万円が税引き後に出資に回せる資金(法人に8,508万円)。

 となります。

 このシミュレーションで単純に法人と個人の双方に残る金額を比較すると、退職金を経由させた場合のほうが税引き後に使える資金は約592万円多めに残すことができます。

 確かに差額の約592万円は小さい金額ではありません。しかし、退職金を経由させる場合は役員を退職させる必要があります。また、税引き後の資金が残る先も、法人と個人なのか、それとも法人だけなのか、と異なります。

 お客様の状況により、どちらが最適かは異なります。顧問税理士とも良く相談しながら、両者の手取り額の差と、役員退職などの条件を天秤にかけ、より最適な選択をして頂ければと存じます。

(※なお、保険の損金性や解約返戻金額の大きさによって数値や手取り額の差は異なります。また、法人税や個人の税額によって単純に比較ができないことをご理解下さい)